合同会社等の法人を設立した場合は、税金対策が重要ですが、中でも消費税対策は、会社設立時の利益に直接つながる重要な対策です。そこでこのページで、消費税の基礎的な知識とその制度について説明します。
目次
消費税の仕組み
消費税は、その名が示すように最終的には消費者が負担する税金ですが、その納税義務は会社等の事業者が負います。この結果、会社等の事業者は、消費税額を自社の商品やサービスに上乗せして回収することになります。ただ、この納税額の算出は、売上金額に加えた税額から、仕入れ代金として支払った税額を控除した残額として計算するという(仕入税額控除)、非常に分かりにくく、複雑な計算が要求されます。そこで、会社や業者が負担する消費税に申告実務は大きなものとなり、頭を悩ます業務と言えます。そこで、これら会社や事業者負担を軽減するための制度に、簡易課税制度があります。
簡易課課税制度とは
消費税の原則課税制度の計算は、非常に複雑で事業者や会社業務負担を大きくします。そこで、比較的小さな会社や事業者の消費税納税額の計算を簡単にする制度が採用されています。それが、簡易課税制度です。簡易課税制度の適用を受けるには、以下に掲げる2つの要件を満たすことが必要です。
1.簡易課税制度選択届出書の提出
この制度は、税務署に予め届出書を提出して初めて認められる制度です。届出期日は、適当を受けようとする課税期間開始日の前日までですが、新規に会社を設立した場合等は、初年度の期末までに提出すれば承認されます。
但し、適用されると最低2年間は継続する必要があります。
2.基準期間の課税売上額が、5000万円以下であること
この制度は、小さな会社や事業者に対する消費税納税義務負担を軽減するために設けられた制度なので、基準値である2年前の売上が5000万円以下である場合に限り認められます。
尚、この届出を出していても、基準年度において5000万円以上の売上があった場合は適用されず、また、簡易課税の選択届出書は、取りやめの届出を行うまでは、その効果を有するので、基準時の売上高が5000万円を下回った場合は、再度この制度に従って消費税の再計算を行います。
会社設立で、消費税を利益に
合同会社との会社を設立することで、消費税を利益に代えることが可能です。原則として消費税の納入義務が課せられるのは、前々事業年度、つまり2年前の課税売上高が1000万円を超えた場合です。この規定のおかげで、売上高が1000万円を超えても、その後2年間は、消費税納税義務がなく、この間に会社に滞留した消費税相当額は、実質上、会社の利益となります。
旧商法における株式会社の設立では、資本金の額が1000万円以上とされていたため、消費税の免税法人の要件である資本金1000万円以下の要件を満たすことが法律上不可能で、設立1期目から必然的に消費税納税義務者とされ、2年間の消費税免税措置の恩恵を受けることができませんでした。
しかし、現在では、会社法が施行され、株式会社の資本金額の要件が撤廃されたので、資本金の額を1000万円以下に設定して会社を設立すれば、消費税の納付義務を2年間回避出来るメリットを享受することができます。
また、個人事業者が、法人組織形態への変更を行ういわゆる「法人なり」の場合は、課税売上高が、1000万円超えてから、2年経過する前に、資本金1000万円未満の会社を設立すれば、合計4年間の間、消費税免税事業者となり、消費税相当額を会社の利益とすることも可能です。
消費税対策は、各種届出書の確認から
消費税に関する届出は、その後の納税額や手続きの簡素化に重要な影響を及ぼします。届出書の提出を忘れたために、還付されるべき税金が還付されず、逆に納税義務を負うような事例が数多く見受けられます。そこで、以下に掲げる消費税に関する届出書の留意点について注意が必要です。
1.提出期限に注意
消費税の各種届出書の提出期限の殆どは、適用を受けようとする課税期間の開始日の前日までとなっています。例えば、9月が決算の会社が、その年度に簡易課税の適用を受けたい場合は、8月31日までに届出を行う必要があります。ただ、新設法人や新規事業者に関しては、課税期間の末日までに届出を行う事で、初年度から適用を受けることができます。
2.選択した制度は最低2年間の継続が必要
消費税に関しては、いったん選択した制度は、最低2年間は継続して利用することが義務付けられているので、各種届出における損得勘定は、2年間を通算したシミュレーションを行う必要があります。
主な届出の効果とその提出期限一覧
消費税に関連する各種届出で、頻繁に活用され、利用価値の高いものを以下に記載したので、消費税対策の参考にしてくださくぃ。
届出書の種類 | 提出期日 | 提出の目的・要件 |
---|---|---|
消費税課税業者届出書 | 期間の定めなし | 基準期間における課税売上高が、1000万円を超える場合は届出が必要 |
消費税課税義務業者に該当しなくなった届出書 | 期間の定めなし | 基準期間における課税売上高が、1000万円以下になれば届ける |
消費税課税業者選択届出書 | 選択しようとする課税期間の前日まで | 免税業者が、課税業者になることを選択し、税金の還付を受けようとする際の届出書 |
消費税課税選択業者の不適用届出書 | 選択を止めようとする課税期間の前日まで | 免税業者に戻ろうとする際の届出書 |
消費税簡易課税選択届出書 | 選択しようとする課税期間の初日の前日まで | 事務負担の軽減を図るためや実際の仕入れ率より、みなし仕入れ率の方が高く有利であると考えた場合に、提出することが考えられる届出書 |
消費税簡易課税選択不適用届出書 | 選択を止めようとする課税期間の初日の前日まで | みなし仕入れ率に比べ実際の仕入れ率が高く、簡易課税制度のメリットがない場合に届出る |
消費税課税期間特例選択、変更届出書 | 変更、短縮関わる期間の初日の前日まで | 輸出税等の還付金が多く見込まれる場合等に、課税期間を短縮したり、変更することで、還付金の住基回収を図るための届出書 |
消費税課税期間特例選択不採用の届出書 | 選択を止めようとする課税期間の初日の前日まで | 特例を受けたメリットがなくなり、適用を止める時に提出する届出書 |
消費税の新設法人等に該当する旨の届出書 | 期間の定めなし。また、法人設立届出書提出の場合は、提出不要 | 新設法人には課税基準期間がないので、事業年度開始日における出資額や資本金の額が1000万円以上であれば、課税業者・法人となるので、その際に提出する届出書 |
消費税が課税されない取引
消費税は、資産の譲渡や輸出入取引等において、国内で、対価を得て、事業者が事業として行うと言う3つの要件に該当する時に課せられます。これらの要件のうち1つでも満たさなければ消費税は課せられません。例えば、海外における取引や寄付や贈与の無償取引には課されることはありません。
この他消費税には、政策的に消費税をかけないことを規定している取引があります。例えば、不動産のうち、土地取引については消費税はかかりません。この理由は、政策的な面もありますが、土地は本来消費するという概念が観念できないからです。また、住宅や教育に消費税を課すことは、消費税の逆進性(所得の低い者ほど家計負担率高まる)を強めることになるので、税本来の理念に合致しないからです。
消費税が課せられない取引に、免税取引があります。この取引は、商品の輸出や国際輸送、また、外国にある事業者対するものやサービスの提供等の取引です。この取引は、輸出類似取引と呼ばれますが、輸出取引も、輸出証明書を作成・保管する等の一定の要件を具備すれば消費税は課せられません。
消費税の申告と納税方法
消費税を含む税金には、それぞれ課税期間がありますが、課税期間とは、納税額の基礎となる期間のことです。具体的には、個人事業者の課税期間は、1月1日から12月31日までで、会社等の法人は、定款で定めた事業年度がこれにあたります。消費税もまた、法人税や事業税と同一の課税期間で計算します。消費税の確定申告や中間申告は、この課税期間を元に決定します。
個人事業者の場合の確定申告は、毎年3月15日までとなっていて、同3月31日までに消費税の申告を行う事になっています。
会社等の法人の場合は、事業年度の末日の翌日から2カ月以内に確定申告書の提出を行い、それと同一日に申告に係る消費税額の納付を行う必要があります。つまり、個人事業者の場合は、所得税の確定申告から消費税の納付まで2週間の猶予があるのですが、会社等の法人の場合は、法人税の納付と消費税の納付を同じ日に行う必要があります。