合同会社設立時には、事業目的を必ず作成しなければなりません。事業目的は行いたい事業のイメージが明確にあっても、自己流で作成するとその内容が法務局あるいは許認可事業の場合は管轄の官公庁に認められない可能性があります。事業目的を作成するには、厳格なルールが定められています。事業目的とは何か、最適な事業目的を作成するにはどうしたら良いかを説明いたします。
目次
事業目的とは?
事業目的とは、会社がどのような内容の事業を行って収益をあげるかということを明確な文章したものことです。そして、事業目的は会社を設立するときに必須の書類の1つである定款に必ず記載しなければなりません。
会社を設立する前に、どのような事業を行うかという事業目的は、必ず存在するので改めて考え直すことはないと考えている起業家(経営者)も多いかもしれません。しかし、事業目的は、よく考えて記載しないと、会社設立時に法務局で書類を受け付けて貰えなかったり、事業目的に変更があったりしたときに再作成の手間や無駄な費用がかかることになります。
その理由は、事業目的の内容に違反してはいけないことが定められておりそれに違反した事業目的は認められないこと、および定款に記載された事業内容しか事業を行ってはいけないと定められているからです。
しかし、一方で、記載した事業目的について、必ず事業を行う必要はありません。そのため、当面、新しい事業を行うつもりがなくても、将来、可能性のある事業について記載しておくことで、定款の作成手間や費用を無くすことができます。
例えば、もっとも事業拡大の可能性のある、主たる事業と関連性の高い周辺事業です。車の修理がメインの事業であれば、車の販売や自動車保険のビジネスはすぐにでも行うようになります。そのため、主たる事業目的を記載した後に、「付帯または関連する一切の業務」と記載しておくことで、定款の変更作成は不要になります。
事業目的に求められる3つの要件
事業目的は、どのような書き方をしても、あるいはどのような内容を記載して良いわけではありません。記載内容には以下の3点を満たすことが法律によって求められています。この条件を満たさない事業目的は認可されず事業を行うことができません。
1.法律に違反していない事業であるという適法性
常識ですが、公序良俗・法律に違反する事業を目的として行うことはできません。
2.ボランティアなど非営利事業でないという営利性
非営利事業には、社会福祉・地域活動(ボランティア)、政治献金、学術・文化・スポーツの振興、消費者保護活動、子供の健全育成、国際協力などがあります。なお、非営利の事業を目的とすることができませんが、会社として献金や寄付などの非営利行為をすることは全く問題ありません。非営利活動を組織的に行いたい場合、「NPO法人(特定非営利活動法人)」となります。尚、営利事業を行いながら、非営利事業も行うことは問題ありません。
3.誰が見て事業内容が分かる文言で書かれているという明確性
誰が見てもという理由からと思われますが、事業目的の記載に使用する文字は、「漢字」、「ひらがな」、「かたかな」に限定されています。アルファベットや特殊記号などの日本語以外の文字は原則として使用できません。しかし、「IT」「CD」「Tシャツ」「IC」「LSI」などは、一般化しているということで認められています。
一般化していない英語や英文字の略語などのほうが分かりやすくても、日本語に訳して使用しなければなりません。注意が必要なのは、業界内で常識でも他業界では常識ではないような横文字です。また、一般化している、していないは時代によっても変化していくので、日本語以外の文字を事業目的に使用したい場合は、事前に法務局などに確認した方が良いでしょう。
事業目的の効率的な作成方法
事業目的は、「適法性」「営利性」「明確性」の3要件を満たす必要があります。しかし、適法性や営利性はある程度判断できますが、明確性は漠然として分かりにくく、どう表現すれば良いのか難しいので、作成にあたっては以下の方法を参考にして作成すると3要件を満たす事業目的が作成できます。
なお、3要件を満たしていても、例えば風俗営業と人材派遣業などは個別では認可されますが、この2つを同じ会社で事業目的にすると、認可されない可能性があるので事前確認が必要となります。
1.同業他社の事業目的あるいは事例集を参照
定款は、費用はかかりますが自由に閲覧することができます。同じようなビジネスを行っている会社の定款を閲覧することで、認可されている事業目的の内容が分かり参考にすることができます。
また、「会社事業目的の事例集(CD-ROM、ダウンロード版)」「会社目的の適否判定事例集(書籍)」も出版されています。また、法務局で事例集が閲覧できる可能性もあるほか、インターネットで許可された事業目的の文章を閲覧できるサイトもあります。
2.法務局の相談コーナーで確認
法務局にある「相談コーナー」で事業目的の案を作成して持参し確認してもらいます。なお、微妙な内容の事業目的に関しては、各法務局の登記官によって判断が分かれることがあります。会社の本店所在地を管轄する法務局で相談するのが確実です。
3.許認可事業を行う場合、許認可する管轄官公庁に事前確認
法務局で事業目的の内容が問題ないと判断されても、許認可が必要な事業の事業目的の表現では、管轄する官公庁で認められないことがあります。介護・福祉、飲食、ホテル・旅館、医薬品、人材派遣・紹介、理容室・美容室、建設、不動産、運送・タクシー事業などの許認可事業を行う場合は、管轄官公庁に事前に確認します。
事業目的作成上の2つの注意点
事業目的の作成は、法務局や許認可事業であれば、法務局に加えて管轄官公庁で確認をしてもらうことで作成できます。しかし、事業目的の内容は、謄本にも記載されるので、誰でも自由に見ることができます。そのため、初めて取引する相手先の会社や金融機関が信用調査などで事業目的を見て、どんな事業を行っているのかを理解してもらいにくかったり、書かれている内容によっては不信感・不安感を抱かれたりします。最悪は、事業遂行に支障をもたらす可能性も考えられます。
1.事業目的の明確性に注意
事業目的に求められる「適法性」「営利性」は客観的な判断がつきやすいですが「明確性」は、主観的で抽象的なので不明瞭です。「不動産業」というと、多くの一般人は大体の業務内容が想像できますが、それでも2006年に法律が改正されるまでは不可とされていました。
しかし、法律が改正されてからは認められるようになりました。同じように、「商業」「販売業」「工業」「製造業」も、現在の法律の基では、認められるようになりましたが、これらは、「不動産業」と異なり非常に事業内容があいまいです。そのため、初めての取引先や金融機関などに分かりやすく、例えば、製造業であれば、どのような製品を具体的に作っているかを明確にしておくことで相手先に与える印象が良くなります。
特に製造業では販売業と異なり、全く違う分野に進出することは少ないので、事業内容が変更や、追加になることは少なく定款の変更に至ることは少ないと考えられます。「付帯または関連する一切の業務」を付け足しておくことでかなりの範囲をカバーできます。
2.事業目的として記載する事業数
事業目的に記載する事業は、事業を行っている必要はないので、将来、いろいろな事業を行いたいという意欲や目標があればいくつでも記載できます。定款の作り直しを考えると記載しておくことで費用と手間を削減できます。
しかし、事業目的の明確性と同じで、初めて取引する相手先の会社や金融機関が信用調査などで事業目的を見て、あまりにも多くの事業目的が記載されていると、本業をしっかりやろうとしているのか不安視される可能性が十分考えられます。そのため、いくつくらいが適当であるかは、一概にいうことができませんが、あまりにも多くの事業目的を記載するのは避けておく方が無難です。会社規模にもよりますが、事業目的としてあげるのは5件程度で、多くても10件以内でしょう。