帝国データバンクは7月、「遊園地・テーマパーク経営企業の実態調査」で、昨年の売上高合計が約8360億となり、前年比1.9%の増加となったことを発表しました。
地域別にみると、特に四国、近畿が好調でともに2桁伸び率となりました。
近年、訪日外国人観光客の増加が追い風となって、売上高増加が続いていた遊園地・テーマパーク業界。経産省「特定サービス産業動態統計調査」によれば、2014年度の遊園地・テーマパークの売上高は、調査開始以来(2000年)の過去最高額となる6000億円超えを達成しました。
しかし、2016年の遊園地・テーマパークの入場者数は前年比1.3%減となる8039万人となったことを受け、帝国データバンクは「引き続きインバウンドの取り込みが課題となっている」と警鐘を鳴らしました。
外国人観光客特需の終焉で遊園地も新たな方針転換を図ることになるのか。本記事では、帝国データバンク公表資料をもとに、遊園地・テーマパークの経営実態を詳しく見ていきます。
1 売上高は微増して8360億円に
帝国データバンクは、遊園地・テーマパーク経営企業のうち収入高が判明している155社を対象に調査・分析を行いました。
1-1 増収した企業は6割
今年4月、名古屋市港区にレゴブロックで知られるレゴのテーマパーク「レゴランド」が開設されたことが、多くの話題を集めたテーマパーク業界。調査対象となった155社の昨年の売上高合計は約8360億500万円となり、前年比で156億6700万円の増加(1.9%増)でした。
また、増収となった企業は約6割に当たる90社で、前年より9社増加しました。
一方、減収となった企業は約3割に当たる28社となり、前年より10社減少しました。
増収 | 減収 | 横ばい | |
---|---|---|---|
2015年 | 81社 | 38社 | 36社 |
2016年 | 90社 | 27社 | 37社 |
(帝国データバンク発表資料より作成)
1-2 黒字企業は8割超え
また、155社のうち、黒字企業となった数は昨年より減ったものの、76社で80.9%を占めました。さらに2期連続で黒字となったのは71社で7全体の5.5%でした。
一方、赤字企業は前年より3社増えて18社となり、19.1%を占めました。2期連続で赤字となった企業は10社で全体の10.6%にとどまりました。
黒字 | 赤字 | |
---|---|---|
2015年 | 79社(84.0%) | 15社(16.0%) |
2016年 | 76社(80.9%) | 18社(19.1%) |
(帝国データバンク発表資料より作成)
さらに、黒字だった76社のなかでも売上高100億円以上の大企業が増収傾向にあることがわかりました。
2 近畿、四国で特に好調
売上高を地域別(北海道、東北、関東、東京、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州)に見ると、近畿と中国で2桁伸び率を記録したのが特徴的でした。
2-1 近畿13.3%、四国16.9%の上昇
前年比で最も高い伸び率を見せたのは四国の16.9%となりました。そのほかの地域は、北海道2.9%、東北△1.8%、関東0.5%、東京2.9%、北陸1.0%、中部3.7%、13.3%、中国6.0%、四国16.9%、九州△2.1%でした。
帝国データバンクによると、「近畿」では、大阪で水族館を運営する海遊館が開業25周年を迎えたこと、新たな水族館施設の「NIFREL」の集客が好調なこと、さらにはさらには大阪・京都でのインバウンド需要が東京並みだったことが、大幅増収(同44.0%増)につながったとしました。
・ 地域別売上高
2016年 | 2015年 | 増減率 | |
---|---|---|---|
北海道 | 181億7700万円 | 187億0600万円 | 2.9% |
東北 | 72億5200万円 | 71億1900万円 | △1.8% |
関東 | 4276億8800万円 | 4299億7800万円 | 0.5% |
東京 | 1437億2200万円 | 1479億1500万円 | 2.9% |
北陸 | 30億2000万円 | 30億5100万円 | 1.0% |
中部 | 1068億8600万円 | 1108億5000万円 | 3.7% |
近畿 | 32億5600万円 | 369億0100万円 | 13.3% |
中国 | 92億2200万円 | 97億7100万円 | 6.0% |
四国 | 73億6800万円 | 86億1200万円 | 16.9% |
九州 | 644億4200万円 | 631億0200万円 | △2.1% |
(帝国データバンク発表資料より作成)
2-2 好調の理由は?
遊園地・テーマパークでの売上高が上昇している理由として、外国人観光増加のほかに、家計の消費支出額に占める「遊園地入場・乗り物代」の割合が上昇していることが挙げられます。
総務省の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出額に占める「遊園地入場・乗物代」の割合は0.071%(2014年)となっており、2011年以降右肩上がりに増加していいます。
年 | 消費支出(円) | 遊園地入場・乗物代(円) | 消費支出額に占める遊園地入場・乗り物代の割合(%) |
---|---|---|---|
2010 | 3,027,938 | 1,658 | 0.055% |
2011 | 2,966,673 | 1,593 | 0.054% |
2012 | 2,971,816 | 1,712 | 0.058% |
2013 | 3,018,910 | 1,895 | 0.063% |
2014 | 3,017,778 | 2,148 | 0.071% |
(帝国データバンク発表資料より作成)
・ 1世帯当たりの消費支出額に占める「遊園地入場・乗物代」の割合の推移
(経済産業省公表資料より)
また、「遊園地・テーマパーク」売上高に占める訪日外国人消費額の割合は上昇しているのも主な要因です。
2011年には訪日外国人消費額の割合は0.7%でしたが、2014年には1.4%と倍になりました。
・「遊園地・テーマパーク」売上高に占める訪日外国人消費額の割合の推移
年 | 訪日外国人消費額の割合 |
---|---|
2011 | 0.7% |
2012 | 0.8% |
2013 | 1.0% |
2014 | 1.4% |
(経済産業省公表資料より)
3 昨年の遊園地・テーマパークランキング
テーマパーク別に見た昨年の売上高ではオリエンタルランドの「東京ディズニーリゾート」が3962億円6200万円で最も多くなりました。
ついで2位USJ「ユバーサル・スタジオ・ジャパン」1500億、3位東京ドーム「東京ドームシティ」596億7900万円、4位ナムコ「ナムコ・ナンジャタウンほか」437億5600万円、5位富士急行「富士急ハイランド」で274億4900万円、6位ハウステンボス「ハウステンボス」で266億3200万円、7位長島観光開発「ナガシマリゾート」で258億5100万円、8位モビリティランド「鈴鹿サーキット」で257億6900万円、9位西武鉄道「西武ゆうえんち、としません」で217億2400万円、10位よみうりランド「よみうりランド」で177億3700万円と続きました。
順位 | 会社名 | テーマパーク名 | 売上高 |
---|---|---|---|
1 | オリエンタルランド | 東京ディズニーリゾート | 3962億6200万円 |
2 | USJ | ユバーサル・スタジオ・ジャパン | 1500億0000万円 |
3 | 東京ドーム | 東京ドームシティ | 596億7900万円 |
4 | ナムコ | ナムコ・ナンジャタウンほか | 437億5600万円 |
5 | 富士急行 | 富士急ハイランドほか | 274億4900万円 |
6 | ハウステンボス | ハウステンボス | 266億3200万円 |
7 | 長島観光開発 | ナガシマリゾート | 258億5100万円 |
8 | モビリティランド | 鈴鹿サーキット | 257億6900万円 |
9 | 西武鉄道 | 西武ゆうえんち、としません | 217億2400万円 |
10 | よみうりランド | よみうりランド | 177億3700万円 |