厳しい罪に問われることもある脱税行為。メディアでは、所得隠しや法人税の未払いなどがしばしば紙面を賑わせます。
国税庁は8月、租税滞納状況に関する報告書を公表し、昨年度の滞納整理中のものの金額(滞納残高)は、前年比803億円の減少となる8971億円となり、滞納発生割合は1.1%と、過去最少水準だったことを明らかにしました。
新規発生滞納額を徴収決済済額で除して求める「滞納発生割合」は、2006年度以降13年連続で2%を下回っており、国税庁発足以来最も低い割合となっています。
国税庁は、滞納の未然防止や整理促進に努めた結果、新規発生滞納額は低水準に収まっていると述べました。
税目別にみた滞納額では所得税4111億円、法人税981億円、相続税752億円、消費税3100億円、その他税目26億円となりました
本記事では、国税庁が公表している「平成28年度租税滞納状況」をもとに、税目別の滞納状況を詳しく見ていきます。
1 昨年度の租税滞納額、8971億円
国税庁では、適正かつ公平な徴収を実現するため、期限内収納の確保に努めるとともに、滞納となったものについては、納税者個々の実情を踏まえながら、法令等に基づき、滞納処分を実施するなどして確実な徴収に努めるとしています。
ここで、「滞納」とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいいます。
資料によると、2016年度の租税滞納額が前年比8.2%減(803億円減少)の8971億円で、ピーク時(1999年)の3分の1以下まで減少しました。
1-1 滞納額はピーク時の3割
滞納額は2000年以降、18年連続で右肩下がりに減少しており、ピーク時(2兆8149億円)の31.9%となります。
・ 過去10年間における滞納額の推移
滞納整理中のものの額 | |
---|---|
2006年度 | 16844億円 |
2007年度 | 16151億円 |
2008年度 | 15538億円 |
2009年度 | 14955億円 |
2010年度 | 14201億円 |
2011年度 | 13617億円 |
2012年度 | 12702億円 |
2013年度 | 11414億円 |
2014年度 | 10646億円 |
2015年度 | 9774億円 |
2016年度 | 8971億円 |
(国税庁公表資料より作成)
1-2 昨年度の税目別滞納額
滞納額を税目別にみると、所得税4111億円(厳選所得税1437億円、深刻所得税2674億円)、法人税981億円、相続税752億円、消費税3100億円、その他税目26億円となりました
税目 | 平成28年度 | 平成27年度 |
---|---|---|
所得税 | 4111億円 | 4523億円 |
法人税 | 1437億円 | 1069億円 |
相続税 | 2674億円 | 819億円 |
消費税 | 981億円 | 3340億円 |
その他税目 | 752億円 | 23億円 |
計 | 8971億円 | 9774億円 |
(国税庁公表資料より作成)
2 滞納発生割合、史上最低水準に
年々下がる租税滞納発生割合。昨年度は国税庁発足以来、最も低い1.1%となりました。
2-1 新規発生滞納額6221億円
昨年度における新規発生滞納額は6221億円で、前年より650億円減少(9.5%減)となりました。その内訳は、厳選所得税348億円、深刻所得税1157億円、法人税611億円、相続税317億円、消費税3758億円、その他31億円となります。
新規発生滞納額は1992年に1兆8903億円と最も高かなりましたが、以降は減少傾向が続き、2006年には1兆円を下回り、2013年に5477億円とも最も低くなっていました。
国税庁は、期限内収納を確保するため、期限内納付に関する広報や納期限前後の納付指導の実施など、滞納の未然防止に努めた結果であるとコメントしました。
・ 過去10年間の新規発生滞納額の推移
滞納整理中のものの額 | |
---|---|
2006年度 | 8998億円 |
2007年度 | 8825億円 |
2008年度 | 8988億円 |
2009年度 | 7478億円 |
2010年度 | 6836億円 |
2011年度 | 6073億円 |
2012年度 | 5935億円 |
2013年度 | 5477億円 |
2014年度 | 5914億円 |
2015年度 | 6871億円 |
2016年度 | 6221億円 |
(国税庁公表資料より作成)
2-2 滞納発生率1.1%は3度目
新規発生滞納額を徴収決定済額(申告などにより課税されたものの額)で除して求められるのが滞納発生割合となります。
昨年度は、新規発生滞納額6221億円÷徴収決定済額57兆6516で1.07%となりました。
滞納発生割合は2001年に2.6%でしたが、以降、2008年まで下がり続け、2010年にわずかに微増した後は下がり続けました。そして2013年に国税庁発足以来最も低い1.1%を記録し、以降低水準が続いています。
・ 過去10年間の滞納発生割合の推移
滞納発生割合 | |
---|---|
2006年度 | 1.7% |
2007年度 | 1.7% |
2008年度 | 1.9% |
2009年度 | 1.8% |
2010年度 | 1.6% |
2011年度 | 1.4% |
2012年度 | 1.3% |
2013年度 | 1.1% |
2014年度 | 1.1% |
2015年度 | 1.2% |
2016年度 | 1.1% |
(国税庁公表資料より作成)