
減少傾向にあるとされる交通事故死者数。最近は高齢者の運転による事故が注目を浴び、運転免許を自主返納する人も増えているといいます。
警察庁は9月、今年上半期における交通死亡事故の特徴に関する調査結果の発表を行いました。これによると、人口当たり死者数は、高齢者を含めて減少傾向にあるものの、交通事故死者のうち高齢者が占める割合は54.4%と高い水準であることが分かりました。
このほか、警察庁は夜間における「自動車対歩行者」死亡事故について、ハイビーム(前照灯上向き点灯)を使用していれば約56%の事故は衝突回避できた可能性高いと発表しました。
死亡事故は夕方5時台から夜7時台にかけて最も多く発生しているとし、ドライバーに対して早めの点灯を呼びかけ、併せてハイビームの使用を励行しました。
対向車や歩行者がいるときに使用しづらいのがハイビーム。果たして本当に5割以上も交通事故を減らすことができるのでしょうか。
1 交通事故死者数は減少傾向
警察庁によると、2017年上半期の交通事故死者数は1675人で、うち65歳以上の高齢者は911人でした。過去10年間では全年齢層で38%(2686人→1675人)、高齢者で27%(1244人→911人)の減少となりました。
また、人口10万人当たり死者数は、過去10年間では全年齢層で37%、高齢者で42%減少しているものの、高齢者の人口10万人当たり死者数は全年齢層の2倍を超えています。
・ 交通事故死者数の推移
全年齢層 | 高齢者 | |
---|---|---|
2007年 | 2686人 | 1244人 |
2008年 | 2319人 | 1110人 |
2009年 | 2252人 | 1099人 |
2010年 | 2208人 | 1112人 |
2011年 | 2150人 | 1051人 |
2012年 | 1946人 | 986人 |
2013年 | 2011人 | 1047人 |
2014年 | 1925人 | 994人 |
2015年 | 1892人 | 1006人 |
2016年 | 1827人 | 997人 |
2017年 | 1675人 | 911人 |
(警察庁資料より作成)
・ 人口10万人当たりの交通事故死者数の推移
1-1 死者数のうち高齢者は5割超
交通事故死者数のうち65歳以上高齢者が占める割合は54.4%と高く、10年前との比較では8.1ポイント増加しています。また前年比では0.2ポイントの減少となります。
・ 65歳以上が占める割合の推移
2007年 | 46.3% |
---|---|
2008年 | 47.9% |
2009年 | 48.8% |
2010年 | 50.4% |
2011年 | 48.9% |
2012年 | 50.7% |
2013年 | 52.1% |
2014年 | 51.6% |
2015年 | 53.2% |
2016年 | 54.6% |
2017年 | 54.4% |
(警察庁資料より作成)
1-2 「自動車乗車中」の死亡事故が36.0%で最多
状態別死者数を見ると、「自動車乗車中」が全体の36.0%を占めて、最も多くなります。次いで「歩行中」34.4%、「二輪乗車中」16.1%、「自転車乗車中」13.1%と続きます。
今年の状態別死者数は、「自動車乗車中」603人、「歩行中」577人、「二輪乗車中」270人、「自転車乗車中」219人となります。
過去10年間を見ると、いずれの状態も減少傾向で推移しており前年比でも減少しました。
・ 状態別死者数構成比の推移
歩行中 | 自動車乗車中 | 二輪乗車中 | 自転車乗車中 | |
---|---|---|---|---|
2007年 | 33.3% | 35.8% | 17.9% | 12.8% |
2008年 | 32.9% | 36.3% | 17.9% | 12.9% |
2009年 | 33.7% | 34.8% | 17.0% | 14.2% |
2010年 | 34.7% | 33.0% | 18.0% | 14.1% |
2011年 | 36.2% | 32.6% | 18.3% | 12.8% |
2012年 | 36.7% | 33.5% | 16.9% | 12.8% |
2013年 | 35.0% | 33.8% | 16.9% | 14.0% |
2014年 | 36.2% | 35.8% | 16.3% | 11.5% |
2015年 | 35.7% | 32.5% | 16.6% | 14.8% |
2016年 | 33.6% | 36.5% | 16.9% | 12.6% |
2017年 | 34.4% | 36.0% | 16.1% | 13.1% |
・ 状態別死者数の推移
歩行中 | 自動車乗車中 | 二輪乗車中 | 自転車乗車中 | |
---|---|---|---|---|
2007年 | 895人 | 961人 | 480人 | 345人 |
2008年 | 763人 | 842人 | 414人 | 398人 |
2009年 | 758人 | 784人 | 383人 | 319人 |
2010年 | 766人 | 728人 | 398人 | 312人 |
2011年 | 779人 | 700人 | 393人 | 275人 |
2012年 | 714人 | 652人 | 328人 | 249人 |
2013年 | 704人 | 679人 | 340人 | 281人 |
2014年 | 697人 | 689人 | 314人 | 222人 |
2015年 | 675人 | 615人 | 315人 | 280人 |
2016年 | 613人 | 666人 | 308人 | 231人 |
2017年 | 577人 | 603人 | 270人 | 219人 |
(警察庁資料より作成)
2 ハイビームで56%は衝突回避可能!?
夜間における交通死亡事故に関する分析結果では、自動車と歩行者による死亡事故(自動車直進中の場合)において前照灯上向き点灯(ハイビーム)により衝突回避できた可能性の高い事故が225件中126件(約56%)あったと警察庁は発表しました。
事故件数 | 割合 | |
---|---|---|
衝突回避できた可能性が高い | 126件 | 56% |
衝突回避できた可能性が低い | 99件 | 44% |
計 | 225件 | 100% |
(警察庁資料より作成)
2-1 照射範囲はロービームの2.5倍
調査では、夜間かつカーブなど右左折を含まない自動車直進中の場合、また衝突回避が困難な速度およびロービームでも余裕をもって停止できる速度以外などの条件で行われた結果、ハイビームにより衝突回避できた事件は225件中126件(56%)だったことが分かりました。
一方、残り99件は、ハイビームを使用していたとしても、障害物と歩行者との距離関係等を踏まえて算出した自動車から歩行者発見地点までの距離、当時の自動車速度等を総合的に勘案したところ、衝突回避の可能性が低いと判断されました。
一般的に、前照灯上向き点灯の照射範囲は100メートル、前照灯下向き点灯は40メートルとされます。より照射範囲が大きい前照灯上向き点灯は、対象者(歩行者など)を発見しやすく、衝突事故を早めに回避できるとされます。
(警察庁資料より)
2-2 薄暮時間帯・夜間における死亡事故の特徴
警察庁は、死亡事故が最も多く発生する17時台〜19時台の時間帯について、特に日没時刻が18時以前となる条件下で薄暮時間帯に多く発生し、また、薄暮時間帯の死亡事故については、特に年末にかけて大幅に増加すると分析しました。
薄暮時間帯や夜間の死亡事故は「自動車対歩行者」による事故の割合が高く、いずれも65歳以上の高齢歩行者が死亡するケースが多発しています。薄暮時間帯は、男性・女性高齢者による散歩・買物・訪問が多いほか、男性高齢者の夜間の飲食が多くなるためです。
これを踏まえて、警察庁は、歩行者に対しては、反射材用品等の普及・着用を促進し、自動車運転者に対しては、前照灯について早めの点灯や対向車・先行車がいない状況における上向き点灯(ハイビーム)の使用を励行するとしました。
(出展:Car From Japan)