個人でも、合同会社といった会社を設立して事業を行う際にも、最も関心の有る事項が節税対策と言えます。そこでこのページでは、節税に関する基本的な手法と知識を簡単に説明します。
目次
- 合同会社を設立して、節税メリットを享受する
- 青色申告の利点、節税
- 青色申告の申請と承認要件
- 役員報酬と節税
- 経費計上可能な役員報酬は3種類
- 社宅による節税対策
- 自宅を事務所とする節税対策
- 旅費規定による節税対策
合同会社を設立して、節税メリットを享受する
個人事業を合同会社等の法人に組織変更すれば、会社の収支が赤字であっても、法人住民税が発生します。また、法人化すれば税務、会計記帳の正確さがより一層要求されるので、税理士等の専門に対する報酬も必要となります。そこで、この点だけを捉えて、法人化はデメリットが大きいと感じる方もいます。しかし、法人化によるメリットは、これらのデメリットと比較して非常に小さいと言えます。
以下に様々な節税対策を紹介しますが、例えば、法人の場合は、生命保険加入などの「福利厚生費」として生命保険料の経費計上が認められますが、個人事業主の場合は経費計上出来ません(ただ、ある一定限度で控除可能)。また、法人では経費計上可能な範囲が個人事業主よりも広い上に、所得に対する累進課税ではないため、法人住民税額以上に利益が出ていれば、個人事業主よりも節税になると考えられます。
青色申告の利点、節税
個人事業又は株式会社、合同会社といった法人に係わらず、青色申告行う事は節税対策として有効です。但し、青色申告の利点を受けるためには、会社の帳簿を確実に作成し、会計・経理資料を保存することが必要です。
青色申告を行う事の具体的な利点は、(1)青色申告を行った合同会社等の法人の場合、当該事業年度に発生した赤字に関しては、翌年度から7年間に渡って繰り越す経理処理が可能で、この間に黒字が発生した場合は、この繰越額と相殺できるので、大きな節税効果が期待できること。また、(2)青色申告を行った会社は、租税特別法の適用対象会社となり、様々な租税上の優遇を受けることが可能になる2つを挙げることができます。
青色申告の申請と承認要件
青色申告は、個人事業、会社に係わらず活用することで大きな節税効果かが期待できますが、この申請・承認には以下に掲げる2つ要件を具備する必要があります。
1.税務署に対する申請と税務署の承認
青色申告を行うには、「青色申告の承認申請書」を所轄の税務署に対して、ある一定の期日までに提出する必要があります。また、この申請書の提出は、青色申告の承認が1度なされた後も、税務署や税法上の通達で定められた条件をクリアしなければ、取り消し対象になる可能性が生じるので注意が必要です。
2.青色申告の条件として設定されている帳簿記帳や管理を怠らないこと
青色申告を行うには、事業に発生する取引に関する帳簿や書類を経理上、会計上の定型化された方法で記録・保存することが必要です。決算は、これらの帳簿や会計資料を元に事業年度終了日に行い、また、決算書類や帳簿、請求書等の経理資料は、7年間保管することが義務化されています。
役員報酬と節税
合同会社は、株式会社と異なり、「所有と経営の分離」が行われていない会社形態なので、株式会社で言う株主でない(出資者でない)合同会社の役員は存在しません。ただ、合同会社に出資のみを行うのか、それとも、代表社員や業務執行社員といった株式会社で言う株主兼役員になることも考えられます。
合同会社でも株式会社と同様の役員報酬ルールが適用されるので、この役員報酬ルールを順守すれば、この金額を合同会社の損金として計上することができます。役員報酬額の設定やその分散に取り、節税可能な金額は大きく異なり、利益を殆ど計上しない会計上の処理も出来ないことはありまあせん。
ただ、この場合には会社に対する課税は殆どありませんが、役員として個人に課せられる役員報酬分の課税額が大きくなります。そこで、会社設立時に深くかかわった行政書士等の専門家を窓口にして、合同会社の税務処理に詳しい税理士のアドバイスを受けるとよいでしょう。また、役員報酬額の決定は、法人税の大きくかかわる事項であることはもちろんのこと、同時に、第二の税金とも言うべき社会保険料額にも大きく関わる事項なので、この点については、目先の節税にとらわれず、専門家の幅広い専門知識と経験を活かして節税方針を立てることが肝要です。
経費計上可能な役員報酬は3種類
2006年から会社の役員に対する報酬に関する規定が大きく改正され、従来と比較して経費計上可能な役員報酬の種類は、いかに掲げる僅か3種類のみに限定されました。これに該当しない項目は課税対象となります。
1.事前確定届出給与
役員賞与は従来経費として計上できませんでしたが、税制改正により、事前に確定した給与を予め提出期限内に税務署に必要書類等を提出することで、経費として処理することが可能です。提出期限は、「事業年度の開始から4か月を経過する日」、もしくは、「株主総会から1か月経過する日」のどちらか早い方とされています。
ただ、この届出を提出した場合は、その後1年間、予定した給与を必ず支給する必要があるので注意して下さい。
2.定期同額給与
定期同額給与とは、1か月以下の期間サイクルで定額支給される給与のことで、当該事業年度内の各支給時期に支給額が同額である給料のことです。
具体的には、毎月月末に役員に支払う60万円の給料などが定期同額給与に該当します。定期同額給与が認められる要件は、役員に対する定期同額給与のうち、当該事業年度開始の日の属する会計期間の開始日から3か月以内に行われることです。
例えば、3月決算の会社なら、事業年度開始から3か月以内とは、6月末までとなります。
また、一度給与額を決定しても経営の悪化等で減額を行う必要に迫られることもあるかもしれません。そのような場合は、3か月を超えて行う事も認められていますが、増額については、3か月を超えて行うと、「役員賞与」に認定され課税対象になります。
3.利益連動給与
「利益連動給与」とは、同族会社以外で、業務執行役員(社員)に対して支給する利益連動の給料で、一定の条件をクリアした条件下で認められます。一定の条件とは、例えば、算定方法が有価証券報告書に記載される利益に関する指標を基礎として客観的なものであることなどの条件です。
社宅による節税対策
会社から「住宅手当」を支給された場合、受け取った人の給与となるので、受取金額に対しては所得税・住民税が課税されます。これに対して、社員の住居を法人が借り上げる法人契約を行い、一定金額を社員から徴収すれば、課税されないと言う節税対策があります。
「一定額」の算出は、役員の場合や社員の場合で詳細な規定が設けられているので、具体的な算出は、税理士等の専門家に算出依頼を行う必要があります。
ただ、都心の1等地にある到底社宅とは認められないタワーマンション等は、社宅とは認められません。この点については、小規模住宅が対象になるので注意して下さい。
小規模住宅 国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm
自宅を事務所とする節税対策
合同会社を設立しても、これまで通り、自宅を活用して事務所として使用することができます。自宅を事務所として使用する場合は、その使用割合によって会社の経費として計上可能です。例えば、仕事場専用の部屋が1部屋あり、住居のリビングの半分を業務上の打ち合わせ場所や応接間として使用する場合は、全体の床面積に対して仕事として使用している部分を経費とすることができます。
具体的には、自宅が60㎡で毎月の家賃が18万円、仕事で使用している部分が20㎡なら、家賃18万円のうち20㎡部分、つまり、60㎡の3分の1が経費として計上可能です。
旅費規定による節税対策
この規定はあまり活用されていないと思いますが、「旅費規定」を策定して、合同会社等の法人も節税を行う事ができます。頻繁に仕事で出張することはなくても、何らかのセミナーに参加する場合も業務に関連する旅費として計上可能なです。旅費規定にある宿泊費や日当は、全て会社の会計上損金に該当するので、法人にとって大きな節税対策となります。