年金、社会保障対策では、まず、社会保険の基礎的な知識と理解を得ることが重要です。そこでこのページでは、公的年金、企業年金を含めた社会保険、保障の基本的な知識・対策について簡単に説明したいと思います。
目次
- 起業家には、年金、社会保険の知識が必要
- 社会保険とは
- 社会保険の加入義務
- 厚生年金と厚生年金基金の違い
- 企業年金
- 厚生年金基金は、各企業各業界で設立
- 年金、社会保障対策は会社の使命
- 厚生年金基金制度の改革
- 年金、社会保障対策も、まず、行政書士を窓口に
起業家には、年金、社会保険の知識が必要
合同会社等の起業、会社設立に際して、社員、経営者が常に意識・理解しておかなければならない事項に、年金・社会保険に対する理解とその対策があります。詳細な法令等の規定等の詳しいことは、社会保険労務士やファイナンシャルプランナー等の専門家に相談やアドバイスを受けるとしても、年金、社会保険に対する基礎的な知識を持つことは、起業家はもちろん、社会人としても重要なことです。
社会保険の加入は意外と大きな負担が発生します。起業家は、雇用した社員が安心して働けるような環境作りもその責務と言え、社会保険とをはじめとする年金、社会保険といった福利厚生が優秀な社員獲得のために非常に有効であることも認識する必要があります。
社会保険とは
一般的に、社会保険とは、いかに掲げる4つの種類の社会的な福利厚生制度のことを指します。
1.健康保険
健康保険とは、健康保険法を拠り所とする、主に民間企業の従業員を対象とする公的な医療保険のことを言います。健康保険法上の規定では、その大きな権限が厚生労働大臣に付与されていますが、実務上は、地方厚生局や日本年金機構等の機関に委嘱、委任されて運営されています。
2.厚生年金
厚生年金は、厚生年金法を根拠法として運営される、主に民間企業の労働者が加入する公的年金制度のことを言います。厚生年金法には、「厚生年金保険は、政府が管掌する」と言う明確な規定があり、健康保険と同様に厚生労働大臣がこの制度の責任者になっていますが、実際の制度運営実務の殆どは、社会保険庁の流れを引く日本年金機構に委託・委任されています。
3.雇用保険
雇用保険は、雇用保険法を根拠法とする国が主体となって管理運営する一般的な労働者のための保険です。雇用保険制度の趣旨は、労働者の生活及び雇用の安定を図るために、雇用安定事業や能力開発事業を行ったり、また、失業した労働者に対して失業給付金の給付を行う事です。
4.労働災害者補償保険制度(労災保険)
労災保険とは、労働災害者補償保険法を根拠法とする、国が主体となって運営する労働者の災害に係わる保険です。労災保険は、合同会社等の各事業所単位で適用され、原則として労働者を1人でも使用して事業を行う場合は、強制的適当事業となります。
社会保険の加入義務
会社設立の際には、社会保険の加入が義務付けられます。社会保険の加入義務は、合同会社等の法人及び5人以上を使用する個人事業主は、原則として社会保険に加入する義務があります。
社会保険制度には、4つの種類の保険制度がありますが、これらの加入義務規定はそれぞれ若干の際があるので、以下でその違いを説明します。
1.健康保険の加入要件
社員に健康保険への加入は、原則として義務付けられています。また、正社員ではなくても常用的に雇用されるパート従業員であれば、加入が義務付けられています。
2.年金保険の加入要件
正社員であれば原則として加入が義務付けられています。また、パート従業員でも、常用的な雇用関係があれば加入が義務化かされています。
3.雇用保険の加入要件
社員であれば原則として加入場義務付けられます。ただ、法人の代表者は雇用保険適用の対象者である労働者に該当しないので、雇用保険には加入できません。
4.労災保険の加入要件
この保険は、上記に掲げた3種類の公的保険とその性質が異なる保険と言えます。労災保険には、被保険者と言う一般的な保険に共通する概念が観念されず、従業員を雇用した合同会社等の法人は、必ず全従業員を包括的にこの保険に加入させる義務を負っています。
厚生年金と厚生年金基金の違い
厚生年金と厚生年金基金は、同じ厚生年金と言う言葉が使われているので同一視している方もいるかもしれませんが、厚生年金は、国が管理運営する公的年金制度であるのに対し、厚生年金基金は、企業が管理運営するいわゆる「企業年金」のことを言います。
企業の中には、社員や従業員の定年後を踏まえた福利厚生制度の1つとして企業年金制度を設けていることも多いのですが、厚生年金基金を設立するには、一定の要件を満たす必要があるため、全ての社員、従業員が厚生年金基金に加入しているとは言えません。ただ、会社が厚生年金基金に加入していれば、その会社の従業員や社員は厚生年金基金に加入していることになります。
厚生年金基金の構造を詳しく見ると、公的な厚生年金の一部と後述する企業年金から成り立っています。
企業年金
企業年金とは、厚生年金基金を含む、会社の従業員が定年後の生活保障を充実させるために設けられた福利厚生制度と言えます。日本の年金制度は、簡単に言えば、通常の会社の従業員の場合は、国民年金の上に厚生年金が乗る、いわば2階建ての年金制度ですが、厚生年金基金は、その上に、上乗せ部分と加算部分のお金が基金から支給される構造になっています。企業年金は、民間企業が独自に積み立てた給付を行う制度で、会社が、どのような制度を選択して、どう実施するか、また、基本的なモデル金額をいくらに設定するかを自由に決定することが可能な制度です。
厚生年金基金は、各企業各業界で設立
厚生年金基金は、同業種等で共同して設立している場合も多数存在しますが、原則として企業ごとに設立しています。そこで、転職歴がある方の厚生年金基金の請求先が異なる事態も生じます。
例えば、甲さんが、厚生年金基金制度の有るA社に5年勤め、その後、基金のないB社に15年、更に、基金の有るC社に15年勤めた場合は、厚生年金の受給資格である35年の加入期間があるので、厚生年金を受け取ることができ、その請求先は、日本年金機構になります。しかし、厚生年金基金は、それぞれの会社の基金管理運営組織に請求することが必要になります。
年金、社会保障対策は会社の使命
合同会社を含む会社を設立する起業家は、年金や社会保険料等の対策を確実に行う必要があります。起業すれば、まず、法人税や企業住民税等の税金のことが気になりますが、年金や社会保障対策は、税金よりも会社のキャッシュフローに対する影響が高いのです。また、年金や社会保障対策を整備するには、会社の事務手続きも煩雑化し、事務負担費も増加します。
ただ、会社の年金を含めた社会保障対策は、社員や従業員が安心して働ける環境を整備することなので、優秀な人材を確保するためには欠くことのできない会社の使命とも言えるのです。
厚生年金基金制度の改革
実は、2014年4月から、厚生年金基金制度の大きな改革が開始され、多くの厚生年金基金の解散が検討され、その実施が進もうとしています。
本来、厚生年金基金制度は、国の景気が右上がりの成長に生まれたもので、国は厚生年金を配分する以上に運用利益が大きかったので、その分を民間企業が管理運営する厚生年金基金に分配していました。ところが、バブル経済の崩壊やサブプライム・リーマンショック、また世界経済の同時不況等の要因で、厚生年金の運用益はマイナスなのに、厚生年金基金に補填すると言うった矛盾が生じています。企業の負担増も大きな問題となっています。
そこで、厚生年金基金制度については法律を改正し、国の厚生年金相当は基本的に国の管理に戻すことになりました。
具体的な年金制度は、少子高齢化や消費税等の税収の問題と深く絡み合い今後どのような制度になるかは不透明な部分も多いのですが、会社を起業する場合は、自己並びに社員、その家族を視野に入れた年金と社会保障対策を十分に検討する必要があります。
年金、社会保障対策も、まず、行政書士を窓口に
年金や社会保障対策は、会社にとって大きな負担となる事ですが、個人的に自立した者が共同して設立する合同会社でも、この問題を避けて通ることはできません。年金等の社会保障対策を字社の事業形態や環境、実態に即してどのように構築して行くかは、会社の将来を左右する重要事項です。
ただ、年金、社会保障対策は、法令等の専門的な知識と理解も必要なので、合同の代表社員や業務執行社員はもちろん、一般の社員もその基礎的な知識と理解をもち、更に、社会保険労務士等の専門家のアドバイスを受けることが大切な事です。この点では、会社設立業務に精通し、各種書類作成のプロである行政書士は、社会保険労務士等の各種士業者にネットワークを持って活動していることが多いので、まず、行政書士に相談を持ちかけることが得策と言えます。